会長挨拶・役員紹介
会長挨拶
わが国は、かつて経験したことのない少子高齢・人口減少社会を迎え、私たちを取り巻く社会環境は厳しさと不透明さを増すばかりです。厚生労働省はその対応策として、「地域包括ケアシステムの構築(2013)」や「地域共生社会の実現(2016)」に続き、2022年12月に「全世代型社会保障構築会議」の最終報告書をまとめました。人生100年とも言われる時代にあって、社会保障制度だけではリスクをカバーし切れない現実を私たちは受け止めなければなりません。現役として働き続ける期間を延長し、引退したその後も自助、互助により地域の力を総動員して介護だけでなく社会的孤立の解消や養育環境の整備など、多方面の課題をカバーする包括的な支援体制作りの一翼を国民一人一人が担うことを求められています。
そんな厳しい時代背景に加え、3年間の新型コロナウイルスによるパンデミックが、事態の厳しさに更に追い打ちをかけました。多くの国民が生活の基盤を揺るがす事態に見舞われて解雇、DV、生活困窮、自殺等々、社会問題は一層、深刻化しました。このような社会背景が健康状態に影響を及ぼすことは、我々、医療ソーシャルワーカーの大変、良く知るところであり、社会的課題は健康格差を産むばかりでなく、疾病の治療におけるアドヒアランスが異なることも明らかにされています。疾病を引き起こしケアの障壁となる社会的リスクに対し、我々医療ソーシャルワーカーは、ひとり一人の方々が尊厳を有する唯一無二の存在としてその人権を守り社会正義を実現することを倫理綱領に定め、それぞれの病状や事情を勘案して適切な受療体制が作られ、ウェルビーイングの増進が図れるように実践に取り組んできました。
約10年前、当協会が公益社団法人の認定を受けるにあたり、その活動が国民の福祉の向上に資するものとなるよう定款の目的は、「保健医療分野における福祉サービスの充実及び向上を図り、あらゆる地域において社会福祉士による福祉サービスが提供される環境を整備し、公衆衛生の向上並びに社会福祉の増進に寄与する」に変更されました。多くの先達が積み重ねてきた長年の実践とこの原点を改めて思い起こし、その目的達成のために数年先の社会の姿を見通しながら次の3点を意識して運営に当たりたいと思います。
一、人権を尊重し、保健医療の現場の中にソーシャルワークの価値・機能の浸透を促進できているか、
一、保健医療分野においてソーシャルワークの専門的支援を提供できる人材を十分、育成できているか、
一、分かりやすく、外に開かれた協会の形・基盤整備に取り組めているか、です。
今後とも、皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。